はじめに

「旅先で、懐中電灯を持って地下壕に入った」、なんて話を知人にすると「いったい何を取材してるの?」と聞かれる。ふだんは女性雑誌などを手がけている私の、もうひとつの顔である。
 
このルポのために取材を始めて、足かけ4年になる。これまでもアジア・太平洋戦争で戦場へ行った兵士たちや原爆、都市の大空襲、沖縄戦などを生き延びた人びとから話を聞いたことがあった。同じように南京大虐殺の生存者や、日本軍「慰安婦」にされた方々の証言を聞く機会もあった。日本人にとって加害と被害の二面性を持ち、人によってその比重も違うであろう、あの戦争を、どうとらえるか。簡単なことではないと思う。
 
各地を取材して回るようになったのは、侵略戦争といわれるあの戦争で、身近な自分たちの町や村にこれまで知らなかった歴史がたくさんあること、それを伝え残そうとしている人たちがいることに気づいたからだった.。

・・・・・・・・・・・(つづく)


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